島香房の定番商品「島ネロリのフェイス&ボディローション(化粧水)」は、中身をほとんど変えずに、出会う場所や伝え方を変えることで育ってきました。現場の声、体験、オンラインの反応から見えてきた「接点」と「訴求」の大切さを、実例とともにお伝えします。
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— 接点と訴求が変わると、同じ中身でも届く相手が変わる —
前回は、島香房が商品開発で大切にしている順番として
「接点 → 訴求 → デザイン → 製品 → 技術」
という考え方をご紹介しました。
第二部では、その考え方が実際の現場でどう生きているのかを、
島香房の定番商品のひとつ
「島ネロリのフェイス&ボディローション」
の変遷を通してお話しします。
この商品は、決して最初から今の形だったわけではありません。
むしろ「中身(製品)はほとんど変えずに、接点と伝え方が変わってきた商品」です。
はじまりは「蒸留しただけのフローラルウォーター」でした
もともとこの商品は、八朔の花を摘み取り、水蒸気蒸留して得られた
フローラルウォーター(芳香蒸留水)でした。いまもそこは同じですが。
精油のように強い香りではないけれど、
やさしく、ふわっと広がる八朔ネロリの香り。
それがとても心地よく、
「精油じゃなくても、こんなにいい香りがするんだね」
と、エステティシャンやアロマセラピストの方々に評価されました。
特に、フェイシャルトリートメントの仕上げや、
敏感なお客様へのケアとして
「余計なものが入っていないのが安心」
「香りがきつくなくて使いやすい」
と、プロの現場で少しずつ広まっていきました。
プロの声から生まれた“化粧水”という形
そうした声を受けて、
「施術で安心して使えるよう、化粧品登録をしてほしい」
という要望が増えていきます。
そこで、蒸留したフローラルウォーターをそのまま使い、
添加物を加えずに化粧水として登録。
当時は、原料や植物に詳しいプロ向けに
**「八朔花水」**という、かなりストレートな名前で販売していました。

香りの良さから、
「空間スプレーとしても使いたい」
という声もあり、容器はスプレータイプに。
アロマサロンやエステサロン、アロマスクールを中心に、
5年ほど安定して使われ続けていました。
コロナで途切れた「接点」
しかし、コロナ禍に入り状況が一変します。
アロマサロンの縮小や閉店、
対面施術そのものが難しくなり、
プロ向けを前提にしていたこの商品は、
急に動きが鈍くなりました。
中身は変わらない。品質も変わらない。
でも「出会う場所」がなくなってしまったのです。
在庫が動かない状態が続き、
「このまま終わってしまうのかな」
という不安も正直ありました。
常連さんの一言が、流れを変えた
そんなとき、長年使ってくださっていた
アロマセラピストさんから、こんな言葉をもらいました。
「八朔花水、夜寝る前に顔につけるとすごくいいよ。
コットンパックにして使うと、ぐっすり眠れて、朝の肌も気持ちいい。」
この一言で、はっとしました。
プロの施術用としてしか見ていなかったけれど、
家で使うスキンケアとしての可能性が、
すでにお客様の中で育っていたのです。
ちょうどその頃、アロマ業界全体も変化していました。
プロ向け中心から、
「おうちで、気軽に、すぐ使えるもの」
を求めるライト層が一気に増えていた時期でした。
中身は変えず、名前と接点を変える
そこで、フローラルウォーターや成分は一切変えず、
名前と伝え方を見直すことにしました。
商品名は
「島ネロリのフェイス&ボディローション」
に変更。
「八朔花水」という専門的な言葉よりも、
一般の方にもイメージしやすく、
使うシーンが浮かぶ名前に。
容器もスプレーからドロッパー式に変え、
手に取って使いやすい形にしました。
その結果、
50代を中心に、香りが好きな方、敏感肌に悩む方など、
一般のお客様にも少しずつ広がっていきました。
出荷本数は、リニューアル前の約2倍に増えました。
体験の場で生まれた、もうひとつの訴求
そして、この商品はさらに変化します。
毎年5月、大三島では柑橘の花が咲き誇り、
島中が甘い香りに包まれます。
島香房では、その時期にネロリ摘み体験を行っています。
ある日、強い日差しの中で花摘みを終え、
室内に戻ってこられたお客様に
このローションを試していただきました。
そのときの一言が、
「いい香り〜。日焼けの後に顔につけると良さそう。」
この言葉で、また視界が開けました。
初夏から夏にかけて、日差しが強くなる季節。
ネロリのやさしい香りと、さっぱりした使い心地は、
日焼け後の肌ケアという場面にぴったりだったのです。
オンラインの声が、確信に変わった
商品ページの見出しに
「日焼け後の肌ケアに」
という言葉を加え、広告も出しました。
すると、6〜8月の売れ行きが一気に伸びました。
さらに、オンラインショップには
こんなレビューが届きました。
娘が水泳の大会でひどい日焼けになり、
日焼け後のお肌のケアに良い商品を探していました。
天然の濃厚な香りで、人工的な香りは全くありません。
夏は冷蔵庫で冷やして使うと気持ちが良いです。
親子で気に入って使っています。
工房での一次接点。
そして、DMやレビューという二次接点。
オンラインでもお客様像が具体的に見えてきた瞬間でした。
接点と訴求が、商品を育てる
この商品の変遷を振り返ると、
「中身や処方、成分を変えたから売れた」のではありません。
- 誰と出会ったか
- どんな場面で使われたか
- その声をどう言葉にしたか
その積み重ねが、商品を育ててきました。
次回は、これから商品開発を始めたい方や、ODM/OEMを検討している方向けに、
「何を作るか」よりも先に考えておきたいコンセプト設計について掘り下げます。
接点と訴求をどう整理しておくかで、その後のものづくりは大きく変わります。
島香房の現場経験を交えながら、失敗しにくい考え方の土台をお伝えします。

