島香房の小さな工房が実践する商品開発の考え方を、現場の失敗談や気づきとともに分かりやすく紹介します。限られた資源でお客様に届く商品を作るための順番と理由を共有します。

ものづくりは教科書通りにはいきません。島香房は農家発の小さな化粧品工房です。設備も資金も限られている分、「まず誰に届くか」を決め、その人に届くかどうかを基準に商品を作っています。以下は現場での失敗や気づきを交えた、飾らない実務の考え方です。読んでくれた方の日々の選び方の参考になればうれしいです。
①接点設計 — どこで誰と出会うかで商品は変わる
どこで誰と出会うかを決めないまま作ると、せっかくの努力が届きません。
・工房ショップや体験で直接話すお客さん
・地元のマルシェで手に取る方
・ECで文章をじっくり読む方
出会う場所によって、求められる商品や伝え方は変わります。
実際に、工房で「作り手の顔」を見ていただくと、その場で「試してみたい」と言ってくださる方が増えました。逆に、無農薬で頑張って育てた原料や世の中にまだない化粧品成分を作っても出会いがなければ売れない経験を何度もしています。
②訴求・ターゲティング — どんな場面でそばにあるか
「誰が」「どんなときに」「どんな気持ちで」使うかを、できるだけ具体的に言葉にします。たとえば:
- 朝の短いスキンケア時間に、さっと使えるもの
- 寝る前の深呼吸タイムに寄り添うミスト
- 合成香料が苦手で天然由来のやさしいものを求める方へ
あるとき「島の無農薬ゆずを水蒸気蒸留法で採った芳香蒸留水の化粧水」と大きく出したら反応は薄く、代わりに「この土地で育った物語」や「どうやって?」、「どういうときに使うの?」をホームページに載せたら問い合わせが増えました。技術は大事ですが、**伝え方(言葉)**でぐっと届き方が変わる場面が多いのです。
③デザイン — 手に取る画(え)の力も大切に
パッケージの形や素材だけでなく、ラベルの絵柄や色使い、文字の雰囲気と配置──いわゆるグラフィックデザインも購買に直結します。農家らしい素朴なイラストや、手描き風のフォント、やわらかい色合いは「親しみ」を生みます。
試作でおしゃれに寄せすぎたグラフィックにしたら、工房の世界観とずれてしまい手に取られにくかったことがありました。逆に、産地や空気感をイメージしたラベルにしたら、手に取ってもらえる回数が増えました。見た目と触り心地、そして絵や文字が伝える「らしさ」は必ず合わせて考えます。
④製品(処方・中身) — 使って納得してもらうこと
香りのバランスや油脂との相性、使い心地は、実際に使ってみて初めてわかります。島香房は少量生産の利点を活かして、最初のロットは手作業で微調整します。ある商品は最初のロットで香りが薄すぎ、使った方の声を受けて処方を見直したことがあります。小回りが利くのは小さな工房の強みです。
⑤製造技術/原料管理 — 現場で悩んで、現場で直す
蒸留の温度、使う水の状態と分量、柑橘の収穫時期、処理方法など、現場の条件は日々変わります。良い装置だけですべてが片付くわけではなく、原料の状態が結果に大きく影響します。例えば:
- 収穫直後と数日寝かせた果実では香りが違うため、調達タイミングを決める必要がある。
- 小ロットだとロット差が出やすいので、**香りのチェック(実際に嗅いで確認)**を必ず行っています。
機械任せでは気づけない「人の目」が、まだまだ重要です。
現場の本音
正直に言うと、「無農薬レモンを使ってます」や「オーガニック成分配合」、「原料の栽培から蒸留、化粧品製造まで全て自分たちで手がけました」という言葉だけで売れることは少ないです。
ある年、人気商品がニーズの変化で売れなくなったときはがっかりしましたが、常連のお客様から「新しい使い方」をご提案いただき、改善したら再び売れるどころか主力商品になりました。
また、工房やマルシェで直接話して反応を確かめられたことは、数字ではわからない大きな発見でした。そうした失敗と改善の積み重ねが、今の島香房を作っています。
順番の意味と工房からの約束
私たちが商品開発をする際、優先している順番は、①接点→②訴求→③デザイン→④製品→⑤技術です。これは、①→⑤に進むにつれて労力やコストがかかります。しかし、まず①と②を改善することで沢山の方に使っていただけることを経験しました。
限られた資源を無駄にしないための現実的なやり方でもあります。先に「どこで誰と出会うか」を決めると、デザインや処方の迷いが減ります。もちろん技術的な品質確認は欠かせませんが、まずは「届くこと」を基準に考えていきます。
お客様とのコミュニケーションを第一に考え、ときにはDMで「なぜ買っていただけたんですか?」、「使い心地はいかがでしたか?」とお聞きすることもあります。
私たちは職人的なものづくりのプロであると同時にお客様のプロでもないといけません。
農家の素朴さを大事にしつつ、これからも”顔が見えるコスメ”作りを続けます。
最後に:いつも島香房の商品をお使いいただいている方へ
「なぜ私たちの商品を買っていただけたんですか?」
よろしければ使っていただける理由を教えていただけますか?これからの商品開発に活かしていきます。
コメントお待ちしております。
次回は、島香房の具体的な体験談を通して「接点設計」と「訴求・ターゲティング」がなぜ重要かをさらに掘り下げます。お客様からの直接の声、工房での反応、ECでの文章が生んだ手応えなど、現場の話をお届けします。

