
12月に入り、冷え込みがだいぶ深まってきました。
空気が澄んでくるこの季節は、香りをより鮮明に感じられる時期でもあります。
ふとした瞬間に精油のボトルを開けると、どこか懐かしい記憶が広がり、心がゆるむ——そんな体験が増えてくる頃ではないでしょうか。
今日は、実ははじめてのブログ。島香房が日々のものづくりで大切にしていることを、少しゆっくりと綴ってみようと思います。
初めての方にも、長く愛用してくださっている方にも、「島香房の香りってどう生まれているの?」という背景を、少しでも感じていただけたら嬉しいです。
■ 柑橘の香りの奥にある“土地の記憶”
島香房の精油づくりは、瀬戸内の柑橘と深く結びついています。
大三島をはじめとした島々は、海から反射する光と、穏やかな潮風、そして雨の少ない温暖な気候に恵まれ、柑橘の栽培に最適な土地です。
春には、柑橘の花が一斉に咲き、島全体が白い香りに包まれます。
収穫の季節には、太陽をたっぷり浴びた果実が実り、蒸留所の小さな窓から漂う甘い香りが、季節の移ろいを知らせてくれます。
香りは、ただの香りではなく
「土地」「気候」「人の手仕事」
そのすべてが重なり合って生まれるもの。
島香房が柑橘にこだわる理由は、ここにあります。

■ 少量生産を選ぶ理由
私たちは、製品づくりのほとんどを“少量で丁寧に”行っています。
大量に作るほうが効率は良いのかもしれませんが、香りやテクスチャー、素材の状態は一つひとつ異なります。
蒸留したての精油には、その年の気候や収穫の時期による微妙な違いが表れます。
「今年はレモンが少し軽やかだね」
「ネーブルの皮にしっかり陽が当たって、香りが濃い」
そんな変化を感じながら、製品ごとに配合を微調整し、香りの方向性を整えていきます。
大量生産では見過ごされてしまう“小さな違い”に向き合うためには、どうしても手作業が欠かせません。
その分、時間も手間もかかりますが、
「自然のままの香り」を届けたい
という想いのほうが、私たちにとっては大切なのです。

■ 原料を無駄にしない、循環のものづくり
島香房では、原料の“循環”にもこだわっています。
例えば、人気の「しまなみサボン ストロベリー」は、収穫の過程で出てくる規格外の大三島産イチゴを保湿成分に使っています。
本来なら捨てられるはずのイチゴ、植物由来の保湿成分が沢山含まれています。
「もったいない」だけではなく、素材がもつ可能性をもう一度生かすことができないか。
そんな問いから生まれたのが、この循環型の石けんです。
自然に寄り添うブランドとして、ただ原料を消費するのではなく、
“素材に新しい命を吹き込む”
そんなものづくりを、これからも大切にしていきたいと考えています。

■ 香りがもたらす、小さな変化
精油や植物由来成分を使った製品は、劇的に何かが変わることはありません。
けれど、ほんの数秒だけ深呼吸したり、手元にやさしい香りを忍ばせたり。
そんな小さな習慣が、毎日のリズムをそっと整えてくれます。
朝の準備の前に、柑橘の香りをひと呼吸。
寝る前の時間に、やわらかく揺れるネロリの香り。
気持ちが忙しく揺れやすい季節こそ、香りは暮らしと心のバランスを支える“お守り”のような存在です。
島香房の製品が、読んでくださっている皆さまの日々の中で、
そっと寄り添う時間をつくることができたら——
そんな気持ちを込めながら、今日もひとつひとつ、丁寧に手を動かしています。

■ このブログで発信していくこと
今後は、こんなテーマを予定しています。
- 蒸留の舞台裏:香りが生まれる瞬間のこと
- 柑橘の季節ごとの香りの違い
- 敏感肌さんのための、やさしいスキンケアの選び方
- 島での暮らしと植物のこと
- 新商品の開発メモ(まだ少し秘密も…)
SNSよりも少しゆっくり、深く。
香りの背景にある「物語」や「なぜこの商品が生まれたのか」という想いを、ゆっくりお届けしていきます。
■ 最後に──はじめましてのごあいさつに代えて
島香房のページを見つけてくださったこと、そしてこのブログを読んでくださったこと、本当にありがとうございます。
香りは目には見えないけれど、気持ちを整えたり、心を軽くしたりする不思議な力があります。
日々の慌ただしさの中でほんの少しでも、深呼吸したくなるような時間をお届けできますように。
ここから、どうぞよろしくお願いいたします。

